社会福祉法人 神奈川県社会福祉協議会

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阿久和ドムス

2025年12月04日公開
評価結果報告書 第三者評価詳細

評価結果報告書

評価機関名 株式会社フィールズ
評価対象事業所名 阿久和ドムス
評価対象種別サービス 共同生活援助(障害者グループホーム)
設立年月日 2006年10月01日
経営法人・設置主体(法人名等) 社会福祉法人県央福祉会
③ 理念・基本方針 この事業所が実施する事業は、利用者が地域において共同して自立した日常生活又は社会生活を営むことができるよう、当該利用者の身体及び精神の状況並びにその置かれている環境に応じて共同生活住居において、相談、入浴、排せつ又は食事の介護その他の日常生活上の援助を適切かつ効果的に行うものとします。

事業の実施にあたっては、利用者の意思及び人格を尊重して、常に利用者の立場に立ったサービスの提供に努めるものとします。

サービスの提供にあたっては、地域及び家庭との結びつきを重視した運営を行い、市町村、他の障害福祉サービス事業者等その他の保健医療サービス又は福祉サービスを提供する者との綿密な連携に努めるものとします。

事業の実施にあたっては、前3項の他、関連法令等を遵守します。
④ 施設・事業所の特徴的な取組 利用者一人ひとりの生活を尊重し、施設利用によって利用者の基本的権利や利益が損なわれることがないよう、利用者の人格や行動を受け止め、『利用者一人ひとりの個別ニーズに即応した支援』に努めています。基本的な支援方針は利用者の「事業所利用前の生活習慣」を尊重するとともに、利用者の能力に応じて可能な限り「自立」と「社会参加」の機会が得られるよう、支援しています。
⑤ 第三者評価の受審状況 開始:2025年05月08日
終了:2025年11月30日(評価結果確定日)
受審回数:3回(2021年度)
⑥ 総評
◆ 特長や今後期待される点
1)利用者主体の支援を提供しています
法人の理念や事業計画を基本として、事業所の事業計画でも利用者の権利擁護の方針を明確にしています。個別支援計画策定時からアセスメントを丁寧に行うことで、利用者一人ひとりの個性や特性を各職員が理解し、それに沿った支援を実践することを、職員会議(ホーム会議)で確認しています。利用者の意思や希望については、職員が日常の会話や支援を通じた利用者観察、職員同士の情報共有などから把握・理解しています。ゆったりとした事業所の雰囲気の中で、利用者の意向や個性、自己決定を尊重しながら、自律・自立を目標として、更なる向上を図るために必要な支援を提供しています。

2)職員間の情報共有や意思の疎通を円滑に図っています
毎月、常勤・非常勤職員参加の職員会議(ホーム会議)を開催しています。会議では、必要な情報伝達のほかに、個々の利用者の状況を報告し、サービス提供など対応についての検討を行うとともに、感染症や虐待防止等の研修の場としています。職員会議は、各職員にとって利用者をより深く理解し、より良い支援の提供を図る重要な機会です。職員同士の意思疎通と理解を円滑に行うことで、福祉サービスの質の向上や働きやすい職場環境となり、勤続年数の長期化につながっています。

3)地域との交流促進が期待されます
法人の方針や事業所の運営規程で、地域や家庭との結びつきを重視した福祉サービスを提供する旨明記しています。しかし、日常生活の中で、近隣住民との挨拶やコンビニエンスストア利用を通じたやり取り程度で、交流の深まりには至っていません。自治会加入を活かした自治会行事・活動への参加や参画、地域連携推進会議の開催などを通じて、今後地域交流の推進を図ることで、利用者の地域生活の幅が広がる可能性があります。管理者は、地域住民と顔の見える関係を築きたいと考えており、防災や災害対策でも今後相互の協力関係などを話し合うことが期待されます。

4)支援にかかるマニュアルなどの更なる充実を期待します
法人や事業所独自で、支援の標準化を図るためのマニュアルを作成しています。近年入所者の入所期間が長期化するにしたがって、高齢化やそれに伴う身体機能低下の変化があります。今後に向けては、介護内容や方法、今後に向けての支援などについての見直しが必要となってきており、事業所では、マニュアルも含めて、支援にかかる見直しが必要と考えています。見直しについては、日常的な支援やその他の業務に加えての作業となりますが、定期的かつ計画的な見直し作業の実施が期待されます。
⑦ 第三者評価結果に対する施設・事業所のコメント 第三者評価を通じて、客観的な視点から振り返る貴重な機会となりました。評価者の皆様には丁寧なご訪問と的確なコメントをくださり感謝申し上げます。

今回の訪問では、「利用者主体の支援提供」や「職員間の風通しの良さ」について高く評価していただき、大変励みとなりました。
一方で、かねてより事業所の課題として挙がっていた「地域との交流促進」や「支援マニュアルの整備および見直し」については改めてご指摘くださったことで、改善点がより明確化されたものと考えております。

今後も、利用者様および職員にとって安心安全な環境を提供すべく、さらなるサービスの質向上を目指して邁進してまいります。
詳細評価PDF
Ⅰ 福祉サービスの基本方針と組織
Ⅰ-1 理念・基本方針

◆取組の状況(努力・工夫していること、課題と考えていること)

法人理念や基本方針は、年度当初の職員会議で確認するとともに、事務室やリビングに掲示しています。所長は、職員が日々の業務の中で基本方針の理解が確実にできているか、また支援の実践につながっているかの確認や、利用者及び家族への周知が十分ではないと認識しています。今後は、掲示内容を確認し、日中のミーティングを活用するなどの工夫で利用者に対しても理念や基本方針について周知を図ることを考えています。

◆評価機関からのコメント

日常的に、事業所では基本方針に添って利用者の人権を尊重し、利用者主体の支援を実施しています。事業所では更に職員が理念や基本方針を熟知し、行っているサービスの中で実践できているかの確認や、利用者などへの説明を入所時以外にも行うことを検討しており、今後の取組が期待されます。
Ⅰ-2 経営状況の把握

◆取組の状況(努力・工夫していること、課題と考えていること)

法人内で設定しているエリア内の事業所間で福祉に関する情報を共有し、毎月実施している職員会議で福祉事業の動向などを全職員に伝達しています。月次報告も同じ法人の近隣の3グループホームで共有し、常勤職員には会議を通じて状況を伝えることで、経営の安定について共に取り組んでいます。事業所としては、経営が安定していると認識している一方、他法人の不祥事情報を受けて、利用者からの食費徴収が適正に行われているかなどの見直しを行いました。

◆評価機関からのコメント

経営に関しては、法人全体でしっかりと仕組みが整えられており、事業所では仕組みに沿って安定的に運営をしています。事業所としては、経営安定の基本として、利用者の障害区分認定を適切に行っているかを重要視しています。そのため区分認定調査時には、利用者本人や家族、通所先の担当職員も同席する工夫をしています。
Ⅰ-3 事業計画の策定

◆取組の状況(努力・工夫していること、課題と考えていること)

法人では、2024年度からの中期計画がスタートし、事業所では計画を基に管理者が事業計画を策定しています。主には、法人のルールに従い前年度の課題を重点課題として設定し、職員会議で周知を図っていますが、更に職員の理解を深める取組が必要と所長は考えています。また、これまで利用者や家族に対して事業計画に関する話は伝えてきていませんが、今後は利用者への個別的なアプローチに加えて、夕食の前後などの時間を活用して事業計画の内容を伝えていくことも検討しています。

◆評価機関からのコメント

所長は、事業所としての理念などを作成して、具体的に経営、人材育成を盛り込んだ中長期計画が策定できればと考えていますが、現在は構想の段階にあります。法人の基本方針に基づく支援は、利用者主体で日々実践しており、そうした事業所の特長を生かした独自の中長期計画の策定が期待されます。また、利用者や家族にも行事のみではなく、主な事業計画の内容について周知が求められます。
Ⅰ-4 福祉サービスの質の向上への組織的・計画的な取組

◆取組の状況(努力・工夫していること、課題と考えていること)

福祉サービスの課題認識と取組については、管理者が法人の障害者グループホーム部会で他のホームとも話し合い状況を共有しています。事業所では毎月常勤・非常勤職員が出席し、職員会議を開催しています。会議では各利用者の状況報告や対応について詳細に意見交換を行い、会議録を細かく記載することで、各利用者に関する理解を一層深める効果を上げています。管理者は、議事録を基に支援を含む業務上の大切なポイントを押さえ職員にフィードバックするなど、支援の質の向上に努めています。

◆評価機関からのコメント

毎回多くの職員が職員会議に出席することで、支援にかかる情報の共有などを円滑にしています。例えば日中活動の事業所への通所が安定しない、また、感情の起伏が激しく攻撃的になりがちな利用者などへの職員の理解が進み、改善に向けた取組や対応を統一することで、利用者の行動改善につなげています。会議にできるだけ多くの職員が出席する取組の努力の成果が表れています。
Ⅱ 組織の運営管理
Ⅱ-1 管理者の責任とリーダーシップ

◆取組の状況(努力・工夫していること、課題と考えていること)

所長及び管理者(以下、「管理者など」という。)は、県や市、法人のグループホーム部会から得た関係法令などを職員会議で職員に周知するとともに資料を回覧しています。更に職員が直接業務に関連し実感できる内容を中心に、機会毎に伝え理解を進めるとともに、研修としての効果につなげています。事業所では、所長が全体の統括を、管理者が実質的な運営の責任を負った業務分担となっていますが、内容を明示したものはありません。管理者などと職員間では、常時メールを活用しグループまたは個別のコミュニケーションを図り、風通しの良い職場環境を醸成しています。

◆評価機関からのコメント

管理者などと職員間で交換しているメールは、全体で共有すべき情報共有を職員全員で行う場合と、個別に職員とのやり取りが必要な場合を区別して、細やかに行っています。個々の職員に必要な内容をやり取りすることで、その職員に必要な業務関連の教育や支援につなげています。職員の勤続年数が長い傾向にあり当面必要性はないかもしれませんが、今後に向けて、管理者などは、自らの役割と責任を明確にするためにも、その職務について明記した文書作成が望まれます。
Ⅱ-2 福祉人材の確保・育成

◆取組の状況(努力・工夫していること、課題と考えていること)

法人として期待する職員像や職員倫理行動綱領などを明確に示しています。常勤職員に関しては、法人全体で計画的に人材確保を行い、併せて体系化した研修計画の下、職員の育成を図っています。また、非常勤職員も含め入職時には人権擁護に関する内容など必須の研修を行うとともに、事業所として感染症や虐待防止の研修を実施しています。常勤が受講した研修内容については、非常勤職員にも伝達し共有しています。管理者は全職員と面談し、特に常勤職員については法人の職員育成の仕組みである目標管理シートで育成を図っています。

◆評価機関からのコメント

事業所内では、管理者も含め職員間の情報共有や、意見・要望等を相互に伝えあう方法として、グループラインを活用しています。利用者に関する情報共有は、全職員が利用者への理解をより深めることができ、支援の質を高めています。また職員同士が本音で意見交換し、自ら考え率先して行動できる職場環境を整えたことで、働きやすい職場につながっています。今後に向けて、職員全員が同様の水準で業務が遂行できサービスの質の向上を図るよう、管理者などの取組と工夫が期待されます。
Ⅱ-3 運営の透明性の確保

◆取組の状況(努力・工夫していること、課題と考えていること)

法人としての理念やビジョン、財政状況については法人のホームページで公表していますが、事業所の詳細な情報については公開までに至っていません。経営に関しては、法人本部の経理部が一元的にエリアごとに管理をしています。所長が毎月現金や経理の状況を確認し本部と情報を交換するなど、経営改善を念頭に適正な運営に努めています。また、利用者の権利擁護の面では、定期的な第三者評価の受審や、年に一度の横浜市オンブズパーソンの訪問による利用者からの聞き取りなど、外部の目を入れて評価を受けています。

◆評価機関からのコメント

グループホームで、常時入所者を募集していないこともあり、事業所の詳細な情報については公開に至っていません。今後、阿久和ドムスの利用を希望する障がい者や家族、また広く市民に対して、活動内容や特徴など社会資源としての情報を広く提供することについての検討が期待されます。
Ⅱ-4 地域との交流、地域貢献

◆取組の状況(努力・工夫していること、課題と考えていること)

事業所の運営規程では、地域との結びつきを重視した運営を行う旨を謳い、地域の相談事業所などとの連携を図っています。一方、自治会に加入はしているものの実際の活動への参加までには至っていません。事業所は住宅街に位置しており、生活の中で住民と挨拶をする、AED設置の表示をする、利用者がコンビニエンスストアを頻繁に利用するため毎年あいさつに行くなどは行っています。管理者は、地域との結びつきを進めることについては大きな課題としながらも実行には至っていないことから、今後はコンビニエンスストアとの防災協定を結ぶことや、地域の祭り、小学校や地域ケアプラザの防災訓練などに参加して、地域の住民と顔の見える関係づくりをしていきたいと考えています。また、ボランティアの受け入れ実績はありませんが、希望者の受け入れは積極的に行いたいとの方針です。

◆評価機関からのコメント

瀬谷区では、障がい者グループホーム部会で情報交換の会議を開催していますが、毎回の参加はできていないとのことです。また、運営規程で定めている地域連携推進会議が実施されていないこともあります。今後は、自治会行事への参加や地域連携推進会議の開催などで、地域の社会資源や生活に密着する情報、地域ニーズを把握することが可能なことから、利用者の地域生活を更に深め、事業所と地域住民の共存を一層図るための方策などの検討や取組が期待されます。
Ⅲ 適切な福祉サービスの実施
Ⅲ-1 利用者本位の福祉サービス
Ⅲ-1-(1)利用者を尊重する姿勢の明示

◆取組の状況(努力・工夫していること、課題と考えていること)

法人の基本方針に人権尊重を明示し、事業所としても、利用者を尊重する支援に最も注力しています。具体的な取組として、事業所では職員会議に非常勤職員も含めた全員出席を図っています。職員会議では、一人ひとりの利用者について、日常業務で把握した情報を共有し、状況改善のための意見を交換しています。このことで、職員が利用者をより深く理解することができ、支援の質の向上につながっています。また、職員会議を虐待防止や感染症対応の委員会や常勤職員を講師とした研修の場とし、併せて毎回虐待防止のセルフチェックを行っています。利用者のプライバシーにも配慮した生活支援や相談対応をしています。

◆評価機関からのコメント

全職員が利用者尊重の姿勢を大切にして支援を展開しています。所長としては、言葉かけをとってもグレーゾーンと捉えられる対応があるのではないかという可能性を前提に、職員が共通した虐待認識を持てるよう、更に研修に取り組んでいくことを考えています。今後について、更に支援の質の向上が期待されます。
Ⅲ-1-(2)福祉サービスの提供に関する説明と同意(自己決定)

◆取組の状況(努力・工夫していること、課題と考えていること)

入所希望者に対しては、個別に重要事項説明書や契約書を中心にサービス提供に関する説明をしています。また、個別支援計画書策定や変更時にも、時間をかけて利用者本人が理解できる言葉で説明し、文書にはルビを振るなどの配慮をしています。言葉でのコミュニケーションがとりにくい利用者や、会話が可能、言語表現ができても本意とは異なる場合もあり、親族の意向確認や計画相談支援事業所担当者の同席を求め、できる限り本人の意向を汲み取るための工夫をしています。また、地域のアパートなどへの退所後も、必要な場合2、3ヶ月はサポートを継続するとともに計画相談支援事業所など地域の支援事業所に引き継いでいます。

◆評価機関からのコメント

グループホームの特徴や入所手順などの仕組みとして、常時入所の募集をしていないことや、事業所に関するPRの必要性が無いことから、事業所ではホームに関する積極的な広報をするには至っていません。事業所の取組や特長など、広く、利用希望者を始めとした地域住民への社会資源の一つとして、より分かりやすく情報提供をし、利用希望者にとっての選択の幅が広がるような広報活動について、今後の検討が望まれます。
Ⅲ-1-(3)利用者満足の向上

◆取組の状況(努力・工夫していること、課題と考えていること)

提供している支援が、利用者の希望や意思を汲み取り満足できる内容になっているかについては、言語による意思疎通が困難な利用者も含めて、日常の支援での関わりから各職員が注意深く観察し、情報として職員会議での話し合いなどで共有したうえで対応についても確認しながら支援を進めています。仕組みとして、みんなの声ボックスを設置し、話があればメモや手紙でも良いことを利用者に日ごろから伝えています。利用者からの個別の話は、主に個人的な悩みで、事業所への意見や改善要望などはありませんが、職員が企画した外出を伴う行事に関して、多くの利用者が参加を希望し楽しんでいます。

◆評価機関からのコメント

仕組みとして、利用者満足度調査の実施、集団での利用者ミーティングや家族との懇談会などを行うに至ってはいませんが、いつでも個別に利用者の声を聞き、受け止める雰囲気を事業所内に作り上げています。また、利用者から管理者などに直接話があれば、個別に随時対応をしています。利用者から悩み相談を受けた際に改善のための対応メモを渡したところ、利用者がメモを居室に貼って活用する姿もありました。行事の企画などに際し、利用者の参画が期待されます。
Ⅲ-1-(4)利用者が意見等を述べやすい体制の確保

◆取組の状況(努力・工夫していること、課題と考えていること)

法人として苦情解決の仕組みを整備しています。事業所ではルビを振った苦情解決に関するポスターを掲示していますが、事業所としては、掲示内容について視覚情報を工夫するなど、より親しみやすくしたいと考えています。ホーム内ではみんなの声ボックスを設置し、メモや手紙など自由に活用するよう声かけをしています。また異なる個性を持つ利用者毎に、職員は利用者の特性に合わせた話題を持ちかけて、利用者が話しやすい雰囲気作りをするなどの工夫をしています。利用者の話はパソコンに日々記録し全職員が内容を把握し、支援に活かしています。

◆評価機関からのコメント

事業所内では、利用者と職員の関係性では職員がきちんと利用者を受け止めることが大切であるとの方針を全体で明確にしています。そのうえで、利用者にとって厳しい内容の話を伝達する場合は常勤職員が行い、非常勤職員にそのサポートを委ねるなど役割についても細かく配慮し、利用者と職員の良好な関係を築く工夫をしています。
Ⅲ-1-(5)安心・安全な福祉サービスの提供のための組織的な取組

◆取組の状況(努力・工夫していること、課題と考えていること)

事業所では、安心・安全な生活の提供のため、マニュアル類を整備し、健康面では24時間対応の看護サービスステーションと連携をし、必要に応じて随時相談をしています。特に感染症対応では管理者などは感染症対策委員会を年に5回実施するとともに、日常的に利用者や職員への啓発を行っています。災害時対策として、法人の総合防災訓練に年2回参加し、事業所では年に1回避難訓練を実施、水や食料、日用品をBCPに基づき備蓄し管理しています。また、2年前から事故防止につなげるものとしてヒヤリハット事例を収集し、職員会議で共有することで、職員の意識が向上しつつあります。

◆評価機関からのコメント

大規模災害時における地域との連携について、これまでは地元関係者との調整までには至っていません。管理者などは、今後地域からの協力を得たいこと、また事業所として地域に対してできることで貢献していきたいことを話し合い、地域との協力関係を築きたいと考えています。実現の方向での進展が期待されます。
Ⅲ-2 福祉サービスの質の確保
Ⅲ-2-(1)提供する福祉サービスの標準的な実施方法の確立

◆取組の状況(努力・工夫していること、課題と考えていること)

法人及び事業所独自で、支援関係のマニュアルを整備しています。また、個別支援計画書も法人で一元化したものを活用しています。具体的な支援は、利用者の個別支援計画書や業務マニュアルを基本として行い、記録ソフトを導入し個別に一日の支援の流れや過ごし方を時系列で記入し、併せて支援を適切に実施しているかの確認をしています。特別な対応が必要な場合や期間を設定して対応が必要な場合は、朝夕の申し送りと職員間の伝達ノートを活用しています。

◆評価機関からのコメント

個別支援計画の見直しを始めとする、標準的なサービスの実施方法について、法人本部からはマニュアルなどの見直し作業の指示がありますが、十分な見直しには至っていません。利用者の高齢化に伴う状況の変化もあり、支援の内容や方法に関する見直しが必要と管理者などは考えています。今後、見直し作業の計画的な実施が期待されます。
Ⅲ-2-(2)適切なアセスメントによる福祉サービス実施計画の策定

◆取組の状況(努力・工夫していること、課題と考えていること)

利用者の入所時の個別支援計画は、より利用者の希望や意向を反映するために、本人及び家族や必要に応じて自立支援アシスタントなどの同席で、入所希望時の生活状況を把握し、意見を聞きながら支援の内容や手順を作成しています。アセスメント時の情報は、インテークシートに、丁寧かつ具体的に利用者のニーズや希望、家族の意向などについて記載しています。また、日々の支援記録を活かした定期的なアセスメントにより課題を分析し、利用者にどのようなサービスが必要か、何を望んでいるかを明確にしています。利用者のニーズや希望については、日常での会話を始めとするやり取りやモニタリング面接時などで随時聞き取りを行っています。

◆評価機関からのコメント

利用者への福祉サービスは、具体的に分析したアセスメントシートや日頃の支援の中で得た情報で、利用者の希望・課題や求めているものなどを把握したうえで提供しています。個別支援計画書では、課題解決に向けて利用者本人が果たす役割も明確にしています。利用者主体の方針の下、半年毎に利用者や家族の参加を得て、モニタリングを行い、個別支援計画書に沿っての支援の成果を評価し、新たな支援計画書の策定を行っています。
Ⅲ-2-(3)福祉サービス実施の適切な記録

◆取組の状況(努力・工夫していること、課題と考えていること)

職員は記録ソフトを活用して業務日誌を作成しています。利用者の基本情報と日勤・夜勤がそれぞれ行うべき支援、及び支援実施記録などは、事業所内の記録管理システムに入力し、利用者全体の状況を職員間で把握・共有しています。共有した記録は、利用者の個別支援計画の見直しなどのためのアセスメントにも活用しています。管理者などは、職員間で記録する場合の視点や表現方法について統一していないことを課題としています。記録の保管に関しては、所長が責任者となって、個人情報保護規程
により、適切に行っています。


◆評価機関からのコメント

職員は、日常的に実施している支援を記録し、情報として職員会議で全職員での共有化を図りながら、次の支援につなげています。記録の管理・指導は所長が行っており、所長は、内容や表現の違いよりも、記録が事柄の本質を見誤っていないものになっているかどうかを大切にしています。一方で、提供している支援を適切に実施しているかどうか検証するためには、記録の内容や書き方が職員間で差異が生じないようにすることが望ましく、今後に向けて記録要領の整備や管理者による指導や工夫が期待されます。
A-1 利用者の尊重と権利擁護
A-1-(1)自己決定の尊重

◆取組の状況(努力・工夫していること、課題と考えていること)

利用者の日常生活は、個人の支援計画に基づき、利用者をできる限り見守り、自己選択や自己決定を尊重した支援に努めています。法人として権利擁護や利用者主体の支援、虐待防止や意思決定に関する研修会などの年間計画を策定しています。対象となる職員は案内を受けて研修会に参加し、受講した内容は毎月の職員会議で報告することで、全員が共有しています。日常生活での支援はあくまで利用者本人ができることは見守り、介助が必要と判断した場合には希望を確認したうえで、要望に応じて支援を提供しています。

◆評価機関からのコメント

事業所全体に、緩やかな時間が流れており、利用者一人ひとりが自分のペースで、生活をしています。事業所として利用者に強制をしない支援、できる限り利用者の意思を尊重する支援を徹底することで、利用者の安心や穏やかな生活空間を作っています。生活に必要なルール作りについて、可能な範囲での利用者の参加を呼びかけ、利用者の意思を反映することが期待されます。
A-1-(2)権利侵害の防止等

◆取組の状況(努力・工夫していること、課題と考えていること)

法人として、利用者の権利擁護に関する研修を入職時に全員に対し実施するとともに、不祥事発生時の対応などの仕組みも整備しています。事業所内には「県央福祉会職員倫理行動綱領」を大字で掲示しています。また、職員会議の場を利用して年に2回虐待防止などの研修の一環として、全員で倫理行動綱領の読み合わせをし、「虐待防止チエックリスト」で毎月自己診断を行い自分の行動を振り返っています。併せて、2年前からヒヤリハット事例を収集する取組を始めており、徐々に権利侵害の防止も含めた適切な支援の実施に関する意識も向上しています。利用者のプライバシーの尊重に関しても、職員間で日頃から意識を高め取り組んでいます。

◆評価機関からのコメント

ヒヤリハット事例について、職員にはできるだけ事例を収集するよう管理者などが働きかけています。2年が経過し、まだ事例数は多くありませんが、職員会議などでヒヤリハットへの意識を高めることでより質の高い、安心・安全な支援の提供につながると考え、今後も取組を継続していくとしています。今後も、定期的に虐待防止セルフチェックシートなどを活用し、さらに研修を重ねるなど、取組の継続を期待します。
A-2 生活支援
A-2-(1)支援の基本

◆取組の状況(努力・工夫していること、課題と考えていること)

利用者と家族には入所時に施設の「重要事項説明書」で支援方法を説明しています。一人ひとりの特性や希望に応じて支援を提供するために、入所前に丁寧なアセスメントで情報収集を行っています。そのうえで個別支援計画書は、アセスメントシートで心身の状態や生活上の課題分析を行って作成しています。実際には、職員によって利用者の特性の理解や受け止め方にばらつきがあることを施設としては課題としています。連絡ノートの活用などで情報の受け止めを補完しながら、客観的な評価による共通した認識や支援ができるよう取り組んでいます。支援は、自律・自立を目指して、利用者が自分で考えてできることは自分でやること、生活の自己管理をどうしたらよいか考え、自己選択することを大切にしています。

◆評価機関からのコメント

事業所では、利用者がより主体的に自分の意思を伝えられる環境づくりや、利用者の自立に向けた生活技術の向上などに取り組んでいます。また、一人ひとりの利用者の特性や個性、希望に配慮した支援を目指していますが、管理者は、利用者の特性についてより客観性をもって職員が共通した認識が持てるようにする必要があると考えています。年に一度、職員の企画ですが日中活動として外出レクリエーションを実施しており、多くの利用者が積極的に参加し、大きな楽しみになっています。今後に向けて、利用者への理解をより深めるため、職員全体の資質向上を図る取組が期待されます。
A-2-(2)日常的な生活支援

◆取組の状況(努力・工夫していること、課題と考えていること)

個別支援計画書に基づき、利用者一人ひとりの生活歴・環境・心身の状況や希望などを把握したうえで、利用者の個性や特性に合わせた支援を提供しています。施設全体では一日の生活の流れはありますが、支援の基本的方針として決して強制をせず、利用者自身の行動を尊重した支援を大切にしています。食事は利用者に合わせたご飯の固さで提供し、個食を好むかどうかなどで食席にも配慮をしています。特に排泄の支援については、プライバシーやプライドに配慮し、利用者の希望があり必要な場合のみ介護をする、または見守りなどの間接的支援とするなど、利用者の意思や尊厳を大切にしています。やむなく異性介助とする場合は、利用者本人の了解を取っています。

◆評価機関からのコメント

事業所の2階リビングの壁には、日中活動で作成したカラフルで、自由かつ豊かに表現し大きな魚の貼り絵を飾っています。支援の内容や程度は、利用者本人が自ら考え選択することを基本として利用者の意思に添って提供しています。特に排泄や入浴に関しては、ほとんどの利用者が自立しているため、特段の介助は不要ですが、必要に応じて見守りをしながら、声かけなどで必要な部分のみ支援をしています。入浴後は、使用した後お湯を抜き掃除をして次の利用者に代わるというパターンが利用者に定着しており、施設として自立を目指した支援方針の効果が表れています。
A-2-(3)生活環境

◆取組の状況(努力・工夫していること、課題と考えていること)

事業所全体にゆったりとした時間が流れています。室内は清掃が行き届いて清潔を保ち、リビングは生活感があり、利用者は思い思いに過ごしています。利用者の居室にはベッド・エアコン・クローゼットがあり、利用者は自宅で使用していた家具や好みのものを自室に整える範囲で持参し、自分らしくくつろげる空間に整えています。各階にトイレは2ヶ所あります。浴室には手すりを設置し安全を図っています。リビング(食堂)には、大きいテレビを設置し、自由に観ることができます。職員は整理整頓、清潔、安全、衛生管理を心がけて見守りを行って、生活しやすい環境を整えています。入浴は、利用者の気持ちや動きに合わせて一人ずつ順番に行い、その都度浴槽の湯を取り換えています。入浴を済ませた利用者は、次の利用者のために浴槽の清掃をしてから出ています。

◆評価機関からのコメント

職員は、利用者の支援が必要な時には、迅速に支援を行えるように、職員の携帯でグループラインを使用し対応しています。また、利用者間のトラブルなどを解決、または回避するための配慮をしています。必要に応じて、随時相談に乗り、利用者が気軽に相談や会話がしやすいように、緩やかな雰囲気づくりを心がけています。居室の清掃や整理整頓については、基本的に利用者が自ら行うこととなっており、職員は、利用者本人の依頼があれば手伝う形で、利用者の自主性や主体性を大切にしています。
A-2-(4)機能訓練・生活訓練

◆取組の状況(努力・工夫していること、課題と考えていること)

丁寧なアセスメントを実施して策定した個別支援計画を基本に、支援を展開しています。利用者はそれぞれ入所までの生活環境や成育歴等が異なり、経験もさまざまであることから、得手不得手もまちまちです。利用者の多くは基本的に生活上の自立度が高く、食器洗いや風呂掃除などは自主的に行っているため、職員は利用者に、できないことに対して訓練をするという対応ではなく、利用者ができるようになるための支援と捉えています。支援は自立を目指し、日中活動支援事業所とも連携して、社会的側面や精神面も含めた支援を提供しています。

◆評価機関からのコメント

事業所での生活は、利用者それぞれのペースで一日が流れています。利用者に経験がなく作業的にできないことがあれば、職員は段階を踏まえて、個別に、日常生活の中で丁寧に作業をこなせるまでの支援をしており、利用者は確実にひとつずつできる動作を獲得しています。
A-2-(5)健康管理・医療的な支援

◆取組の状況(努力・工夫していること、課題と考えていること)

月に1回、訪問看護師の訪問があります。来所時にはバイタルチェックを行い利用者の健康状態の確認をしています。その他、利用者は個別に服薬や間食などの助言指導を受けています。また、必要に応じ利用者の通院している医療機関と連携し、より適切な医療の提供につなげています。利用者の体調に変化が起こった際にも、職員は一義的に訪問看護師に相談をし、必要な対応について助言を求めています。服薬管理は、基本的に利用者本人が行いますが、必要があれば本人の同意の下職員が預かり、管理をしています。

◆評価機関からのコメント

事務室には緊急時に備えて病院連絡表と「服薬・投薬」「異常事態・事故対応マニュアル」を備えて、利用者に迅速な対応ができるようにしています。訪問看護ステーションは24時間対応可能になっており、利用者に安全・安心な生活を提供しています。医療や健康に関する職員研修について、常勤職員が法人の看護師を講師とする研修に参加し、内容を非常勤職員に伝えることで、全体に周知を図っています。
A-2-(6)社会参加、学習支援

◆取組の状況(努力・工夫していること、課題と考えていること)

利用者と定期的な余暇活動として、毎月、外食会を行い外の食事を楽しんでいます。また、年に一度の野外レクリエーション活動として、高尾山や上野動物園に乗り物を乗り継ぎ遠足に行きました。社会経験を積む機会として、日中活動であるレクリエーション活動では、利用者一人ひとりの特性や希望に応じて職員が企画し、実施しています。利用者個人の趣味や活動に関しては、柔軟に対応しています。

◆評価機関からのコメント

職員と利用者が、高尾山制覇での全員笑顔の写真と上野動物園での写真をリビングの壁に貼っています。電車を乗り継いで行きましたと、利用者は誇らしげで、楽しかったと語っています。今後も利用者の社会参加や学習へのニーズなどの状況を把握するとともに掘り起こして、それに合わせた取組の検討を期待します。
A-2-(7)地域生活への移行と地域生活の支援

◆取組の状況(努力・工夫していること、課題と考えていること)

事業所では、地域での生活を希望し、客観的に可能性が高いと判断する場合には、地域生活に向けての支援を実施しています。移行に向けては、まず本人と支援関係者でアセスメントを行い、地域生活の可能性について検討します。結果、地域生活への移行方針が出た場合には、退所先とその後の生活について、計画相談事業所が中心となって支援しますが、事業所でも物件探しなどの援助を行います。状況により、生活保護のケースワーカーや自立生活アシスタントとも連携し、退所に向けた支援を進めます。退所後に事業所に相談があった場合には受けていますが、少しずつ地域の相談支援事業所に移行できるようにしています。

◆評価機関からのコメント

事業所で自立を目指す利用者とっては、地域交流や社会参加の機会が必要です。地域の情報を受け入れて、参加できるものを選び、地域交流が新たに増えることが期待されます。事業所では、地域移行を希望する入所者の想いや主観と、実際に地域生活が客観的に可能かどうかの判断に差異がある場合の調整が難しいとしています。アセスメントの的確性、地域移行後に活用できる支援機関や人材などについての情報収集、また地域生活を見据えた地域交流の促進など、今後に向けた検討を期待します。
A-2-(8)家族等との連携・交流と家族支援

◆取組の状況(努力・工夫していること、課題と考えていること)

利用者の個別支援計画見直しを行う6ヶ月毎のモニタリングを行う日は、家族が参加できる日に設定しています。事業所として、家族との交流は大切にしており、面会は自由で特に規制はなく、週末に家族の下へ外出や外泊をする利用者もいます。利用者の入所年数の長期化とともに、これからの利用者・家族の課題として、成年後見人制度の利用や親の高齢化、経済上の問題などへの対応が課題となっています。

◆評価機関からのコメント

家族との交流を日常的に図ることができる利用者は限られてきています。これからは利用者家族の高齢化が進むことで、家族や保護者の支援が受けにくくなることが予測されます。事業所として、成年後見人制度等保護者に代わる制度を理解すること、家族からの相談に応じ、支援方法・方針の相互理解を図るとともに、家族状況をさらに理解して、連携の強化を図る工夫や取組が期待されます。

利用者調査結果<別紙3>

利用者調査概要 利用者調査総合結果
利用者総数:10名
アンケート調査対象:10名
ヒアリング調査対象:2名
①  アンケートで評価の高い内容と %
・職員・スタッフは丁寧な言葉で話してくれる。
88.8%

②  アンケートで評価の低い内容と %
・グループホームでの生活あまり好きではない。
22.2%

③  調査全体でとらえた利用者の状況
・利用者の知的障がいの程度は最重度から軽度に亘り、また一人ひとりが個性豊かで職員の対応も各利用者の特性に配慮して行っています。面談した利用者は、職員が自分のことをよくわかってくれているので、安心して暮らせると語ってくれました。
・たまに利用者同士のトラブルや利用者・職員間の齟齬が発生するとのことですが、職員の迅速かつ適切な介入によって解決が図られているとのことです。
・生活の場としてのホーム全体は、ごく自然に穏やかでゆったりと生活が営まれている雰囲気で、清潔な環境を保っています。ホームでの生活に不満や不安がある利用者は一部でみられますが、原因が利用者本人にあるのか職員の対応によるのかは判断できません。しかしながら各利用者は概ね現状を受け入れて、思い思いに自分なりの生活をしていることが面談の様子から伺えました。