社会福祉法人 神奈川県社会福祉協議会

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陽光ホーム

2021年12月24日公開
評価結果報告書 第三者評価詳細

評価結果報告書

評価機関名 株式会社 学研データサービス
評価対象事業所名 陽光ホーム
評価対象種別サービス 共同生活援助事業
設立年月日 2009年04月01日
経営法人・設置主体(法人名等) 社会福祉法人 育桜福祉会
③ 理念・基本方針 育桜福祉会基本理念

   〜心の風景を自由に表現できるキャンバスの想像をめざして〜
 
 育桜福祉会は障害のある方が住み慣れた地域で安心して過ごせるよう、一人ひとりの想いや願いを大切にし、その喜怒哀楽を自由に表現できる心豊かな生活の実現をめざして支援します。

基本方針
 1、利用者の権利擁護と自立支援の推進
 2、安心・安全に利用できる環境整備
 3、人材育成によるサービスの質の向上
 4、地域との共生
 5、活力ある法人経営
④ 施設・事業所の特徴的な取組  法人は、当施設の運営管理において平成21年4月に川崎市の指定管理者として指定を受けました。以来、5年ごとに市の認定を受け、今年度は第3期を迎えています。
 利用者の憩いの実現に向けて支援に努め、特に昨今は新型コロナ感染症の流行に伴い、安心・安全な日常生活の過ごし方を模索しながら、新しい生活様式の取組を試みています。
 ホーム内に医師や看護師がいないことから健康観察はていねいに行います。地域のかかりつけ医院にグループホームに隣接する土地での工事によるストレスの緩和にも留意してもらい利用者が安心して生活を送れるように支援しています。また、建物の老朽化による利用者の不便が生じないよう事業所設備の環境を整えるにしています。
 利用者が希望する地域生活への移行を目ざし、新しい生活に対する思いに基づいた個別支援計画を軸に体験室を用意し、地域生活のイメージを持ってもらうための場を用意しています。
⑤ 第三者評価の受審状況 開始:2021年04月12日
終了:2021年10月27日(評価結果確定日)
受審回数:1回(2016年度)
詳細評価PDF

⑥ 総評

特に評価の高い点 ◆ 通過型のグループホームとして利用者の地域移行を支援しています
 グループホームとしては珍しい通過型のホームです。男女7名ずつの14名が入所し70%は同じ法人の入所施設からの移行者です。長年入所施設で生活していた利用者が安心して地域移行ができるように支援しています。受け入れ可能な地域のグループホームは限られ、移行に伴い通える通所施設に変更することもあります。また、入所施設の利用者のホーム体験利用の場を提供し、地域移行に一歩踏み出してもらいます。利用者が安心して地域移行ができるには長い準備期間が必要になります。職員は、地域で自立して暮らしたいという利用者の思いを大切にし、安心・安全な生活環境を提供し、利用者の生活力を高める支援に努めています。

◆ 職員は、利用者が何でも相談できる雰囲気づくりを大切にしています
 職員は、利用者の第一優先を心がけ利用者がいつでも何でも気軽に相談できるように雰囲気づくりに努めています。利用者の意思を尊重し、利用者の将来の方向性について話し合います。「ここのパン屋のメロンパンが食べたい」といった利用者の要望を実現するために、職員はお金の使い方を本人自身が考えるように支援し、地域の店が本人の生活の場として定着し安心して過ごせるように支援します。地域に出て失敗したこと、うまくいったことなどいろいろな経験を大切にし、日常の洗濯など1人でできることは1人で判断し実行するように支援します。利用者と職員が話し合い、利用者本人の生活力の強化に向けた支援を行っています。
改善を求められる点 ◆ コロナ禍における利用者のストレス軽減のための工夫がのぞまれます
 コロナ禍が長く続く中で行きたいところに行けなかったり、外出しても時間の制約があったり、買い物にも自由に行けないなど、地域社会での活動を自粛せざるを得ない中で利用者のストレスも大きくなっています。今後の新しい生活様式をどのように組み立て、利用者の理解につなげるか工夫と対策が望まれます。
Ⅰ 福祉サービスの基本方針と組織
Ⅰ-1 理念・基本方針

◇努力、工夫していること

「心の風景を自由に表現できるキャンバスの創造をめざして」を法人の基本理念に掲げ、その実践に向けて「利用者の権利擁護と自立支援の推進」「安心・安全に利用できる環境整備」など5項目の基本方針を明示しています。今年度のホームの組織目標に、利用者の安心かつ安全な生活環境を維持していくことを掲げています。組織目標の達成状況を評価し、課題を把握し基本理念や基本方針の実践に向けて対策を推進しています。

◇課題と考えていること

 基本理念の利用者への周知は十分とはいえず工夫の余地があります。利用者の個々の状況に応じて利用者にわかりやすい説明書等作成し、説明する対策が望まれます。
Ⅰ-2 経営状況の把握

◇努力、工夫していること

 毎月開催の法人全体の管理職会議に出席し、福祉の動向やホームの運営に関する環境の変化等の把握に努めています。川崎市障害福祉施設事業協会施設長会及びグループホーム分科会に出席し、グループホームの経営等に関する情報把握に努めています。また、年3回法人内のグループホーム連絡会を開催し、コロナ禍におけるホーム経営を取り巻く環境の変化等について意見を交換し状況の把握に努めています。

◇課題と考えていること

 ホームは築後50年が経過し、設備の老朽化対策が今後の課題です。
Ⅰ-3 事業計画の策定

◇努力、工夫していること

 法人の第3期中期計画(2019年度~2023年度)が策定されています。中期計画は人権の尊重や地域生活支援の充実等の目標を設定し、グループホームの新設等を明記した内容になっています。年度ごとに推進状況に応じた見直しを行い、中期計画を踏まえた事業所の事業計画を作成しています。分掌ごとに目標を設定し年度計画を策定し、全職員が参加し組織的に達成状況を評価し事業計画に反映しています。事業計画を職員に配付し周知しています。

◇課題と考えていること

 事業計画の利用者への周知については工夫の余地があります。利用者にわかりやすい資料を整備するなど、個々の利用者の障害特性に配慮したていねいな説明が望まれます。
Ⅰ-4 福祉サービスの質の向上への組織的・計画的な取組

◇努力、工夫していること

 毎年、利用者満足度調査を実施し、利用者支援の課題の把握に努めています。満足度調査の結果を分析し、サービス改善課題表を整備しています。今年度はコロナ禍における利用者支援にかかわる課題の指摘があり、利用者のPCR検査の実施や世話人による健康管理表のチェック等の改善を図っています。また、世話人の勤務時間に配慮し、常勤職員が毎日世話人打ち合わせを実施し、利用者支援の情報共有を図っています。

◇課題と考えていること

Ⅱ 組織の運営管理
Ⅱ-1 管理者の責任とリーダーシップ

◇努力、工夫していること

 利用者が安心して暮らせる場、安全な拠り所としてのグループホームを目ざし、今年度は特にコロナ禍における感染症対策、サービスの質と働きやすい職場作りに努めてています。日中勤務・夜間勤務での情報共有や全員での会議が勤務上難しいため夜勤前の打ち合わせをていねいに行っています。

◇課題と考えていること

 利用者の安全な暮らしを確保できるよう、建物の老朽化について指定管理のため市との連携をさらに密に行い、適切な対応が求められます。神奈川県知的障害施設団体連合会による「あおぞら宣言(知的障害者権利宣言)」を柱とし、利用者の権利擁護の推進を目的とした「あおぞらプラン」について職員間で共有し、利用者支援の姿勢を確認しつつサービスの質をさらに上げていきたいと考えています。
Ⅱ-2 福祉人材の確保・育成

◇努力、工夫していること

 法人の人材育成による階層別研修、目標管理制度への取組を行っています。利用者特性に応じて職員全員が同じ対応を行えるように支援の統一性を図っています。障害との関連や対応方法などを共有するために職員それぞれの立場や状況に合わせて知識や資料等を提供し、職員間のコミュニケーションを取るようにしています。年度ごとにホームの組織目標を設定し、また、個々の職員の目標シートを作成し職員の目標管理を実施し職員の育成を図っています。

◇課題と考えていること

 職員は年齢幅があり、人生経験や体力・知識などそれぞれの長所を生かした利用者支援に努めています。しかし、非正規職員は業務時間的に研修の場を共有しにくい現状があり、勤務時間等に配慮した育成の仕組の整備が今後の課題です。
Ⅱ-3 運営の透明性の確保

◇努力、工夫していること

 ホームページに法人の理念や基本方針及び定款を掲載し、事業所ごとのサービス支援の概要や法人の事業計画、事業報告、資金収支予算及び事業所の第三者評価結果等を開示しています。法人の会計監査人を設置し毎年定期的に会計監査を実施し、また、内部監査を毎年定期的に実施し予算や取引の実施状況の適切性等を確認しています。

◇課題と考えていること

 地域住民を対象とした広報誌等を工夫し、地域へのホームの理解に向けての対策が期待されます。
Ⅱ-4 地域との交流、地域貢献

◇努力、工夫していること

 利用者は太鼓の会や花火の会で地域の人たちとの交流を図っています。また、コロナ禍で自粛していることもありますが、休日は半数以上の利用者がホームヘルパーを活用し、自分が行きたい所に外出しています。地域の入所施設と連携して体験利用を行い利用者の地域移行を支援するほか、養護学校と連携し多数の生徒を毎年受け入れ、ホームの体験利用を通して将来親元から独立した生活のありようを経験してもらいます。近隣に福祉施設が多いこともあり、防災訓練等の共同実施を通して関係機関のネットワーク作りを推進しています。

◇課題と考えていること

 ボランティアの活用については今後の課題です。

Ⅲ 適切な福祉サービスの実施

Ⅲ-1 利用者本位の福祉サービス
Ⅲ-1-(1)利用者を尊重する姿勢の明示

◇努力、工夫していること

 利用者の希望を叶えるための現状の工夫に加えて、継続して利用者の思いを実現するための視点で利用者と職員が話し合い、利用者自身が納得して取組めるように支援しています。通過型のグループホームを目ざし、地域移行後も利用者が主体的に自分をコントロールできる事を目標にしています。建物の構造上食堂が事務室兼用のため職員間でも利用者に聞かれて良い話に限定するほか、利用者対応もプライバシーに留意しています。

◇課題と考えていること

 職員の利用者に対する呼称が、くん・ちゃん呼びになりやすい状況があり、利用者の年齢にあった呼称や支援に関する人権意識の強化に向けた研修等の対策が望まれます。
Ⅲ-1-(2)福祉サービスの提供に関する説明と同意(自己決定)

◇努力、工夫していること

 地域のグループホームへの通過型施設としての役割を基に、さまざまな場面で利用者が地域移行について理解できるようていねいな説明を行っています。個別支援計画や外出支援での意思確認や、相談したい内容の確認など本人の思いを書き留め、ホームを出て地域移行を実行したときに失敗しないための自立意識の強化等の訓練に力を入れています。

◇課題と考えていること

 通過型のグループホームであることを利用開始時にも利用者・家族に伝えていますが、地域移行や変化に対する理解や受容の難しさがあります。契約更新時などを捉えてよりていねいな理解への取組が必要と考えています。
Ⅲ-1-(3)利用者満足の向上

◇努力、工夫していること

 毎年利用者満足度調査を実施し、利用者支援の課題の把握に努めています。また、日常の生活支援を通して利用者の意向や希望を尊重し、利用者の声に耳を傾けて支援する体勢が整っています。通所先からの帰宅後に対話の時間を持ち、夜間や話したい職員が不在の際は紙に書き気持ちを伝えられる工夫をしています。利用者の希望・要望について利用者と職員が納得できるまで改善策について話し合っています。

◇課題と考えていること

 コロナ禍での利用者のストレスも大きく、今後の新しい生活様式をどのように組み立て、利用者の理解につなげるかを課題としています。
Ⅲ-1-(4)利用者が意見等を述べやすい体制の確保

◇努力、工夫していること

 「苦情解決対応マニュアル」を作成し、苦情解決責任者、苦情対応窓口、第三者委員を明示していつでも苦情を受け付ける体制を整備するとともに、掲示して利用者に周知しています。職員は所定の面談室で利用者が何でも気軽に相談できるように雰囲気づくりに配慮しています。相談内容に応じて個々の相談の内容をケース記録や日誌に書き留め、サービス管理責任者や世話人等の対応措置を明記し、迅速な対応を心がけています。

◇課題と考えていること

Ⅲ-1-(5)安心・安全な福祉サービスの提供のための組織的な取組

◇努力、工夫していること

 法人としての「危機管理対応マニュアル」「ヒヤリハット・事故発生と事故対応マニュアル」を整備し、事故や災害等緊急時の利用者・職員の安全確保に努めています。「防災マニュアル」「土砂災害時避難確保計画」を整備し、年3回避難訓練を実施するなど災害発生の対応に備えています。「衛生管理マニュアル」を作成して手洗いや消毒等を徹底しています。また、「新型コロナウイルス対応状況チェック項目(居住系施設)」を作成し、コロナ対策を推進しています。

◇課題と考えていること

 夜間は男性棟、女性棟職員はそれぞれ1名のみです。夜間の火災や災害発生時を想定した避難対策、近隣の施設との連携等迅速な対応については今後の課題です。
Ⅲ-2 福祉サービスの質の確保
Ⅲ-2-(1)提供する福祉サービスの標準的な実施方法の確立

◇努力、工夫していること

 利用者の障害特性に配慮した個々の状況に応じた支援に努め、支援の統一性を図っています。服薬カレンダーを作成するほか、個々に応じた世話人の支援内容を明示し服薬事故の防止を図っています。個別支援計画の策定はパソコンの生活支援システムを導入し標準化を図っています。アセスメントの実施と支援ニーズの把握、個別支援計画の作成、モニタリング等ケアマネジメントのPDCAに沿った支援を実施しています。

◇課題と考えていること

 利用者個々の障害特性に応じたホーム支援マニュアルを整備し、状況の変化に応じて随時見直しを行い、職員の利用者支援の統一化を図る対策が望まれます。
Ⅲ-2-(2)適切なアセスメントによる福祉サービス実施計画の策定

◇努力、工夫していること

 パソコンを活用した生活支援システムを導入し、アセスメントを実施して利用者の医療、生活歴、ADL(日常生活動作)等の状況を詳細に把握し支援ニーズを明確にしています。アセスメントの結果を基に支援課題を設定しています。また、利用者の主治医や更生相談所のPT(理学療法士)等専門職の意見等を尊重し、個別支援計画を策定しています。利用者の誕生日ごとに個別支援計画の見直しを実施し、半年ごとにモニタリングを行い、利用者の変化の状況に応じ随時計画の見直しを行っています。

◇課題と考えていること

Ⅲ-2-(3)福祉サービス実施の適切な記録

◇努力、工夫していること

 法人の「個人情報保護方針」を策定して個人情報の収集や目的外使用の禁止等について規定し、また、個人情報の使用は必要最低限にとどめる同意書を用いて情報漏洩の防止の徹底を図っています。日々の利用者支援の状況は日誌やケース記録としてパソコンの生活支援システムに入力し、職員間の情報共有を図っています。パソコンの個人情報は、職種ごと、個々の職員ごとにパスワードを設定し個人情報漏洩の防止に努めています。

◇課題と考えていること

A-1 利用者の尊重と権利擁護
A-1-(1)自己決定の尊重

◇努力、工夫していること

 利用者が思いや願いを自分で整理できるよう支援し、利用者が抱えている課題の解決に向けて本人・家族・後見人等を交えて話し合い、利用者の将来の生活につながる方向性とサービス改善の対策に向けた支援に努めています。福祉サービスの利用変更を検討する際には見学や体験利用及び支障となる点の解決策など十分に確認し本人に無理のない支援を探っています。利用者には相談日時やできない理由を明確に伝え、明確でない事は伝えない配慮をするなど、職員間で情報を共有し一貫した対応で利用者の自己決定を支援しています。

◇課題と考えていること

A-1-(2)権利侵害の防止等

◇努力、工夫していること

 法人内の入所施設の権利擁護委員会に参加して、人権意識の高揚、研鑽に努めています。人権擁護に関する振り返りチェックリストを配付し、職員一人ひとりが各自自分の支援を振り返るようにしています。個人の物への対応や入室時のノック、声かけ、日常の対応などは本人の了承を得てから行います。職員は利用者の意見を尊重し、利用者の権利意識に配慮した支援を心がけています。利用者との意見の違い等についても抱え込まずに他の利用者との関係も含めて職員間で情報を共有し、互いに理解を得るような対応をしています。

◇課題と考えていること

 コロナ禍で日中活動先での濃厚接触者として待機になった際に、居室での過ごし方に配慮が必要になります。今後感染した場合のホームとしての対策について課題意識を持ち、人権侵害にならない対応を検討しておく必要があります。
A-2 生活支援
A-2-(1)支援の基本

◇努力、工夫していること

 生活の自己管理ができるよう、利用者の意思を聞きとりながら本人の判断を受け止めています。金銭管理も本人の状態に合わせて段階的にアドバイスし、適切な使い方を考えて生活の楽しみにつなげられるように支援しています。いつも話したい人がいたり、話をしにくい人がいたりします。職員は利用者の状況に応じ利用者と職員の関係性に配慮し情報共有を図り、笑顔や行動から利用者の思いを汲み取る支援をしています。疾病や薬のコントロールについては専門医や更生相談所等のアドバイスを得て、適切な利用者支援に努めています。

◇課題と考えていること

 日々の生活支援をていねいに行っていますが、相手に伝わりやすい言語、障害に合わせた伝え方、失敗を強調しないことなど、さらに利用者支援の質の向上を目ざしたいと考えています。さまざまな地域社会での活動を自粛せざるを得ない現状や今後について、地域移行やレクリェーション等の対策の工夫が今後の課題です。
A-2-(2)日常的な生活支援

◇努力、工夫していること

 職員は、個々の利用者の障害特性に配慮し、利用者が安心して社会生活を送るために必要な生活援助に努めています。法人内の連携施設の栄養士が配食業者作成の献立や食材を把握し、グループホームを訪問し世話人に調理等の直接的な支援・指導を行います。食事は利用者全員が常食で、排泄や入浴、衣服の着脱、移動等の生活は全員が自立しています。金銭管理等の利用者特性に応じた支援目標を個別支援計画に明記し、個別支援計画の達成状況を定期的にモニタリングして、利用者へのサービス改善に努めています。

◇課題と考えていること

 食事の献立を利用者と一緒に考える工夫が望まれます。
A-2-(3)生活環境

◇努力、工夫していること

 建物の立地の影響で屋内の湿度が高いこともあり、特に居室や食堂の換気に注意しています。安全・安心を心がけ危険な道具や薬品等は専用の保管場所に専用の収納庫を設置し厳重に管理しています。共用フロアの清掃は職員が毎日行い、専門業者が定期的にフロアマットの交換を行います。設備の配置や安全性等の点検を毎月実施し、また、毎年専門業者による防災設備点検を実施して利用者の安全な生活環境の保持に努めています。

◇課題と考えていること

A-2-(4)機能訓練・生活訓練

◇努力、工夫していること

 通過型のホームとしてのコンセプトのもとに利用者支援を行っています。職員は、社会生活を送るうえで必要な健康を維持するための運動や洗濯、物干し等の生活動作を利用者の日常に積極的に取り入れ、生活リハビリとして日常生活を組み立てるように支援しています。利用者の高齢化が進みADL(日常生活動作)の低下に配慮が必要なケースでは、日中活動の通所時間や日数を調整し、長く通所を継続できるように配慮しています。

◇課題と考えていること

A-2-(5)健康管理・医療的な支援

◇努力、工夫していること

 利用者の通所先で健康診断の結果を把握し、利用者に必要なバイタルチェックや服薬管理を行っています。一度の服薬を一包化(服用時期が同じ薬や1回に何種類かの錠剤を服用する場合などに、それらをまとめて1袋にすること)するほか服薬カレンダーを作成し、薬のセットと取り出しは異なる職員が担当して二重チェックで誤与薬防止を図っています。衛生管理マニュアルを作成して手洗い・消毒を徹底し、また、新型コロナウイルス対応状況チェックリストを作成するなど、コロナ禍における職員及び利用者のコロナ対策の徹底を図っています。

◇課題と考えていること

 慢性疾病や重複障害等を有する利用者の健康管理について、地域移行を視野に入れて利用者自身で健康管理ができるように、行動障害等の障害特性に配慮した支援の職員の専門性が求められます。
A-2-(6)社会参加、学習支援

◇努力、工夫していること

利用者は地域の太鼓の会やパソコン教室等に通い地域の人たちと交流し社会人としての活動を行っています。職員は利用者の通所先までの交通機関や1人で通えるように安全なルートなどを利用者に付き添って確認し、利用者の自立した生活を支援しています。また、コロナ禍で自重している面はありますが、休日はガイドヘルパーを活用し、本人が希望するレストランや映画・ゲームなど各地に外出し利用者の社会参加を支援しています。

◇課題と考えていること

 コロナ禍での外出抑制や活動の制限が利用者のストレスにつながっています。コロナ禍が長く続く状況の中での利用者の精神的安定に向けたグループホームとしての対応の工夫が期待されます。
A-2-(7)地域生活への移行と地域生活の支援

◇努力、工夫していること

 ホームの安心・安全な生活の提供とともに、より街中での暮らしを目ざす通過型のグループホームとして、利用者が希望する身近な地域での新しい生活に向けた利用者の思いを個別支援計画に反映しています。利用者の通所先までのルートや所用時間、送迎の必要性などを勘案し、本人の地域移行を支援しています。また、近隣の入所施設と連携し、入所利用者を受け入れ地域移行に向けたグループホームの体験利用を支援しています。

◇課題と考えていること

A-2-(8)家族等との連携・交流と家族支援

◇努力、工夫していること

 コロナ禍で家族面会は控えていますが、随時家族に電話をして利用者の状況を説明し家族とのコミュニケーションを図っています。家族の高齢化の状況があり、家族の健康状態等にも気を使い利用者が安心できるようにしています。利用者の半数程度は成年後見人制度を利用しており、本人の障害特性に配慮し後見人と連携した本人の人権擁護に努めています。

◇課題と考えていること

 家族の高齢化が進み両親不在の状況が多くなっています。利用者の高齢化が進む中で入院等の対策、終末期の対策など適切な対応に向けた条件整備が課題です。

その他特記事項:第三者評価機関として今後、特に課題として取り組みを期待したい事項

評価対象 第三者評価機関からのコメント
分類  コロナ禍の中での利用者の閉塞感やストレスに配慮した日常の生活様式の工夫と見直しが望まれます。
 コロナ禍が長く続く中で行きたいところに行けなかったり、外出しても時間の制約があったり、買い物にも自由に行けないなど、利用者のストレスも大きくなっています。地域社会での活動を自粛せざるを得ない中で今後の新しい生活様式をどのように組み立て、利用者の理解につなげるか工夫と対策が望まれます。
分類  通過型のグループホームであることを利用開始時にも利用者・家族に伝えていますが、地域移行や変化に対する理解や受容の難しさがあります。契約更新時などを捉えて、よりていねいな理解への取組が望まれます。
 当該ホームから別のグループホームへの移行は昨年度1名で、今年度も1名を予定し着実に進んでいると思われますが、利用者の平均在籍期間は9年と長く、利用者自身の地域移行に向けた意識の醸成については工夫の余地があります。現状のホームの居心地の良さもあり、積極的に地域移行を希望しない利用者もいるようです。利用者の地域生活の自立に向けたいっそうの支援が望まれます。
分類  職員の利用者に対する呼称が、くん・ちゃん呼びになりやすい状況があり、利用者の年齢にあった呼称や支援に関する人権意識の強化に向けた研修等の対策が望まれます。
 経験豊かな職員が若い利用者を「くん・ちゃん」の呼称で呼ぶことがあります。職員は家族のように親しみを込めているつもりでも、職員の上から目線が一人の成人としての利用者の人権を侵害している可能性があります。くん・ちゃん呼びの是正が求められます。
利用者調査の結果
①ヒアリング調査(本人)  所定のヒアリングシートを用いて2名(男女各1名)の利用者にヒアリングを実施しました。
・職員の言葉遣いはていねいで、時間をとってよく話を聞いてくれる。
・職員は部屋に入る時は必ずノックして入る。無断で部屋に入ることはない。
・食事や入浴などは満足している。食事は美味しいが苦手なものは残すことがある。
・職員は何をしたいかを聞いてくれる。手紙で相談し改善してもらったことがある。
・小遣いの額は職員と相談して決める。コンビニで買物し、レシートを職員に渡す。
・嫌なことや困ったことをいつも同じ職員に相談している。
・ホームの職員以外に通所先の職員や後見人に相談する。
・体の調子が悪いときは、世話人が優しく対応してくれる。病院に連れて行ってくれる。
・外出する時は職員に相談し計画的にやっている。コロナのことも注意している。
・楽しいことが多いので職員に大事にされていると思う。
評価後(評価結果を受け取った後)のグループホーム「コメント」
 利用者の健康を守りながら生活を維持することの難しさ。かつてない疾病感染拡大の中利用者の人権と健康がいつもテーマだと感じて職員一同取り組んでいます。
 感染症拡大に伴う生活規制を続けることは、ホームが閉ざされた空間になり、そうなればなるほど「この空間で許される状況」が出来てしまいがちとなります。そうした中で客観的な視点で様々なご指摘をいただけたことは有難く、これからも利用者が心身ともに生活しやすい場を少しでも確保していけるよう努めていくきっかけとなりました。様々な課題を真摯に受け止めて一つずつ取り組んでいければと考えております。